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執筆者の写真Matsumoto Hideya

2021.12.16 ヴィニュロンの朝は・・・遅い。

霜月。二十四節気で大雪を迎え、周防大島はみかんの収穫最盛期です。早朝まだ朝露が残る中、焚火に手をかざしながら、周りのみかん農家さんの畑は収穫のお手伝いさん達で賑わっています。

さて、我々ワイン農家は、というと、朝日がしっかり昇りきった頃に、家の屋根を元気に走るカラスの足音でようやく目覚めます。ゆっくり朝食を取り、緑茶を飲んだ後、先ず醸造所に向かい、発酵室のシセラの発酵状況と樽熟成庫の室温を確認します。それから、今日一日の作業が始まります。この時期、メインとなる作業はシセラの仕込みです。私たちのみかん畑は、ヴィニュロン2人だけのストイックな収穫です。市場に出荷することはないシセラ専用みかんは、一日に仕込むだけの量を休みなしで一気に収穫し、直ちに醸造所へ運びます。ワインの仕込み時期と比べて、シセラの仕込み期は気温が低く寒さが体に応えますが、シセラを仕込む環境としては最適です。もろみの液温が低いため、発酵がゆっくりと穏やかに進み、きれいな香りが形成されるからです。今年のシセラの仕込みの重要なポイントは圧搾です。搾汁液を低温で保てる夕方から手動バスケットプレスで圧搾を開始し、夜通しゆっくり手動で圧力をかけて搾ります。時間をかけて低温で圧搾すると、みかんを皮ごと搾っているにもかかわらず、苦味が穏やかで、柔らかくまろやかな果汁を搾ることができるのです。夜が更けて、最大圧力まで上げることができたら、ようやく一日が終わり、満足して眠りにつきます。

そしてまた、小鳥のさえずりではなく、いたずらカラスの足音で朝を迎えるのです。




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