仕込み作業を終えてもまだまだ作業は盛りだくさん。今日は、樽出し樽入れ作業の最終日です。
昨年から樽熟成しているワインと今年醸造したワインを入れ替えるという作業は、慎重に綿密に手順を考えて行います。昨日も順調に樽出し作業は進み、樽熟成庫から空でも重たい樽を見かけによらず力持ちのヴィニュロンヌと外へ運んで洗浄し半日陰干しして、また樽熟成庫の元の場所に運び入れたところで、ちょうど夕暮れ時となりました。
後は任せた、とヴィニュロンヌは一足先に夕飯の支度に向かい、私はこれで本日の作業終了!っと最後のトローチ作業(洗浄後に樽内を殺菌するために硫黄玉を燃やす)を行った時に事件は起こりました。
いつもは簡単に取り出すトローチの燃えカスを樽の中にポトリと落としてしまったのです。樽の中に灰を残したままワインを入れてしまうと硫黄の香りが過剰に付いてしまうので、せっかく運び入れた樽を再度外へ運んで洗浄しなければいけません・・・
これは洗濯物に鳥のフンを落されてしまった時の心境に似ている感じか、はたまた白いシャツにカレーうどんの汁を飛ばしてしまった時のじんわりと悔しさが込み上げてくるような感覚に近いだろうか。いや、そんなことを考えている場合ではない。今日一日、一緒にせっせと樽を運び終え、達成感に満ちた表情で帰ったヴィニュロンヌに私は一体何と言えばよいのか・・・。
そして今朝、寛大な心の持ち主と共に、いの一番で樽を洗浄し、無事樽入れ最終日を迎えることができました!めでたしめでたし。
さて、前回に続いて、今期メンバーズ定期便でお届けする製品の現在の状況をお知らせいたします。最後は、こちら。
③シセラ 2019 f f フォルティシモ Ⅱ
[柑橘5種類をブレンドし長期瓶熟成させたみかんの果実酒 / 720ml / ¥4000+tax]
アルコール分 7%
温州みかん(早生種:宮川早生)74%, ポンカン17%, はっさく4%, 不知火3%, せとみ2%
2018.12.23 収穫(ポンカン)-仕込み後ステンレスタンクで熟成・・・①
2019.2.4 収穫(はっさく、不知火、せとみ)-仕込み後ステンレスタンクで熟成・・・②
2019.12.5 収穫(温州みかん宮川早生)-仕込み後ステンレスタンクで熟成・・・③
2020.1.30 ①②③をアッサンブラージュ ・ ろ過
2020.2.9 瓶詰め
2018年、シセラの初仕込みでは、その可能性をできる限り探るため自園のあらゆるみかんを無我夢中で醸造しました。そんな中、12月から年明けまで収穫するポンカン、はっさく、不知火、せとみでも仕込みを試みたところ、あまりにも果皮が固く、果汁の搾り方から悪戦苦闘し、ようやく出来上がった原酒をテイスティングしてみると、突き抜けるような酸味と個性あふれる苦味で実に刺激的な風味でした。これは直ぐに製品化するのは不可能と考え、ステンレスタンクで1年間熟成し、2019年の12月に収穫した温州みかん(宮川早生)の原酒とのブレンドテストを重ねて、上記の比率に導きました。
しかしながら、ワインでも言えることなのですが、原酒が健全な上で何か突出した特長がある場合は、熟成による変化が劇的で楽しみな傾向があります。そこで、ワインでは決して表現できないこの特長をシセラffの個性として主張したいと思い、期待を込めて2020年4月30日に初代シセラ2019ff(Lot.1)を発売し、それと同時にLot.2以降は年間を通して定温管理できる熟成庫のメッシュパレット内で静置してじっくり熟成を待ちました。
すると、やはり瓶詰め当初は早生温州みかん特有の酸味とポンカンやはっさくの苦味が際立っていましたが、それから約2年間、定期的にテイスティングを行いながら熟成経過を確かめていたところ、ようやく全体的に熟成感が表れはじめ、酸味と苦味との調和がとれてきたと感じました。そこで、この瓶内熟成させたものを“ffフォルティシモⅡ”として、今回メンバーズ定期便で蔵出しすることにしました。
ちなみに、今後この柑橘の組み合わせのシセラは、もう二度とつくることはできません。なぜなら、これら柑橘類はKATADA畑の一部にあったのですが、その後ぶどう畑に改植したため、残念ながら再現不可能だからです。醸造所からぶどう畑を見るたびに、当初あったみかん畑の景色を思い出します。私にとってffは、シセラの可能性を追求できただけではなく、周防大島に移住した2013年からの想いが全て詰まった思い出深いシセラです。これから製品化していきますが、ここからはヴィニュロンヌ一人での作業となります。寝かし重なったボトルを一本ずつ割らない様慎重に取り出して、ボトルを拭きロウキャップを付けて、ラベルを貼っていきます。まずは、ffⅡには何色のロウが似合うかの検討から、こだわりヴィニュロンヌの孤独で楽しき作業が始まりました。
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